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副作用マネジメントの工夫 口内炎

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旭川医科大学

半夏瀉心湯が口内炎に有効である理由を成分レベルで追求。西洋医学からも注目が集まっている漢方薬のエビデンスを確立し、多くの患者さんの治療に活かしたい。

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旭川医科大学 外科学講座 消化器病態外科学分野 客員准教授

札幌東徳州会病院 先端外科センター センター長

河野 透 先生

治療の副作用であると患者さんに認識されづらい口内炎。併用療法や栄養状態によっては発現率が高まる

口内炎は日常生活において誰でも経験する疾患です。ですから、口内炎が発生しても患者さんご自身は自覚に乏しいため、医療従事者側から積極的に症状について問いかけをすることが必要です。1週間程度で自然寛解することも多いことを踏まえると、患者さん自ら痛みを訴えるような場合は、症状が慢性化・重症化していると考えてよい状態です。

ベクティビックス全例調査中間集計における口内炎の発現率は、ベクティビックス単独投与例では8.5%(65例/594例)、化学療法併用では19.9%(194例/824例)と、5-FUやCPT-11との併用で頻度が上昇する傾向があります。また、治療歴が長くセカンドライン・サードラインでベクティビックス治療に入ったような患者さんや、栄養状態が不良な患者さんは口内炎ができやすい状態にあると考えられます。

抗がん剤による口内炎の特徴は、①痛みが非常に強く、小さい潰瘍であっても痛む、②免疫力低下によって菌が増殖し、その毒性が酸化ストレスとなって増悪を引き起こす、という点です。①は“炎症性プロスタグランジンE2(PGE2)”が、②は“菌“がキーとなって関与しています(図1)。

(図1)抗がん剤による口内炎の発症メカニズム

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西洋医学も半夏瀉心湯のエビデンスに注目。口内炎のキーであるPGE2や菌の働きを抑える成分の正体は

私が目を付けたのは半夏瀉心湯です。後になって半夏瀉心湯の効能・効果に口内炎が含まれることを知りましたが、使用のきっかけとなったのは、CPT-11使用時の下痢に対する半夏瀉心湯の有効性でした。ラットを用いた研究から、半夏瀉心湯は腸管のPGE2産生を抑制することで、大腸の水分吸収能力を改善する1)と考えられています。同様に、口内のPGE2に対しても半夏瀉心湯は局所的に効力を発揮するのではないかと考えました。実際に、私たちは、FOLFIRIまたはFOLFOX療法が施行された患者さん14名(表1)を対象にした試験2)でその効果を実感しました(図2)。本試験では、グレード1以上の口内炎を発症した際に、半夏瀉心湯2.5gを水50ccに溶解したもので毎食後10秒間含嗽、潰瘍部には綿棒で粉末を直接塗布、という処置を7日間実施していただきました。

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この含嗽というのが半夏瀉心湯の使い方のコツで、抗がん剤による吐気がある患者さんでも実施可能です。もちろん、半夏瀉心湯は抗がん剤による下痢にも有効ですので、そのまま服用いただいても構いません。私は、患者さんの服用薬剤数をなるべく抑えてあげたいという思いから、含嗽を推奨しています。

また、私たちはヒト口腔内のケラチノサイト培養細胞を用い、IL-1β刺激によるPGE2産生への影響を検討した結果、半夏瀉心湯がPGE2産生を抑制することを確認しました。さらに、半夏瀉心湯は7つの生薬で構成されており(表2)、生薬の成分レベルでの解析を行った結果、黄芩(オウゴン)中のWogoninとBaicalinが濃度依存的にPGE2産生抑制効果を示すことを確認しました。

一方、口内炎のもうひとつのキーである“菌”に対しては、黄連(オウレン)中のBerberineが広い抗菌作用を示し、赤痢菌に対しては世界最強といわれるほどです。抗がん剤による口内炎に対しても、Berberineの作用によって口腔内の菌の増殖を抑制し、症状の増悪を防ぐと考えられます。また、最近の研究から、上皮組織修復の際の細胞遊走に対して半夏瀉心湯が亢進作用を有することも明らかになっています。

私たちは、これらの研究結果について、2011年のASCO-GI (Gastrointestinal Cancers Symposium)などの海外の学会でも報告しており、2012年のAGA(American Gastroenterological Association)ではPoster of Distinction Awardをいただいています。漢方薬のエビデンスに対する西洋医学者の関心が高まっている証ではないでしょうか。現在は、プラセボを対照とした二重盲検第Ⅱ相臨床試験(HANGESHA試験)を国内多施設で実施し、その治療効果が証明されつつあります。今後、この結果をより多くの患者さんの治療に役立てたいと考えています。

参考文献
1)Kase Y. et al.: Jpn J Pharmacol 1997; 75(4): 407-413
2)Kono T. et al.: World J Oncol 2010; 1(6): 232-235

(表1)患者背景

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(図2)半夏瀉心湯による口内炎CTCAEグレードの改善
(投与前2.4±0.8、投与後1.1±0.8、p=0.0012 Mann-Whitney検定)

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(表2)半夏瀉心湯の構成生薬

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自ら半夏瀉心湯の効果を実感することで、患者さんに説明もしやすくなる

実臨床においては、化学療法開始時点から半夏瀉心湯の含嗽を実施していただきます。予防的に使用することで、口内炎の発症頻度も抑えられ、発症しても軽度ですむように感じています。

ただし、薬は通常は内服するものであり、また、漢方薬はじっくりと効くものだというイメージがあるので、患者さんに一度の説明だけで半夏瀉心湯の使い方を理解してもらうのは容易ではありません。「半夏瀉心湯が完全に溶けない」「10秒もゆすいでいられない」「直接塗ったときにピリピリする」という患者さんに対して、「半夏瀉心湯は完全に水に溶けるわけではないので構いません」「とりあえず口の中に一回ため込むことが大切です」「直接塗ったときには濃度が高いのでピリピリ感があるかもしれません」と、医師だけでなく看護師・薬剤師からも的確に応対できるような体制づくりが重要です。

ですから、抗がん剤治療に関わる医療従事者の方には、ご自身に口内炎が出たときに半夏瀉心湯を使っていただくことをお勧めしています。私自身も、口角炎ができた際に半夏瀉心湯を直接塗布してみたら、10~15分で痛みがひき始め、2~3時間後にはすっかり痛みが消えました。自ら体験することで、半夏瀉心湯の効果も実感できますし、患者さんへの説明もしやすくなると思います。

私は疼痛対策として鎮痛剤を処方することは、よほど重症時以外はありません。局所麻酔薬などは痛みを抑えるものの、口中に違和感が出てきますのでとても食事ができる状態ではなくなってしまいます。そもそも、口内炎の副作用マネジメントは痛みによる摂食障害を防ぎ、患者さんのQOLを維持することが目的ですから。