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副作用マネジメントの工夫 口内炎

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千葉県がんセンター

ベクティビックス治療による口内炎は、日頃の保湿ケア・保清ケアをきちんと実施することでピリピリ感程度の症状に軽減可能です。

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千葉県がんセンター 看護局

がん看護専門看護師/がん化学療法看護認定看護師

山田 みつぎ 先生

ベクティビックスによる口内炎は、日頃のセルフケアによって症状の軽減が可能。ケアは一に保清、二に保湿

従来の殺細胞性抗がん剤が口内炎を引き起こす機序は、薬剤によるフリーラジカル産生と、免疫力低下による感染によるものです。一方、抗EGFR抗体薬では口腔内のEGFRが阻害されることで局所的に炎症が生じるためだと考えられています。このように殺細胞性抗がん剤と抗EGFR抗体薬とでは、口内炎の発生機序が異なるため、発現時期や持続期間にも差がみられます。

ベクティビックスによる口内炎は、出現時期に個人差があり、投与後1週間の場合もあれば1ヵ月後に起きるケースもあります。口内炎の発現頻度はベクティビックス特定使用成績調査中間集計結果によると、1441例中262例(14.8%)でしたが、実は当院での出現頻度は1割にも満たないのです。これは、発現する前のケアに力を入れている成果だと考えています。

ベクティビックス投与開始から3-4日後、「口が乾燥する」「舌がピリピリする」と訴える患者さんがいらっしゃいます。これは口腔内の粘膜が強く乾燥してくるためです。この状態が悪化し粘膜のバリア機能が破綻すると、乾燥などの不快感は一層強まり、外部からの有害物質の混入や機械的な刺激の影響も受けやすくなります。

最初のピリピリ感をそれ以上悪化させないために、セルフケアが必要になります。患者さんご自身もこのピリピリ感を体験することで、主体的にケアに関わろう、というお気持ちになられるようです。セルフケアをしていただく際に重要なポイントは①保清、②保湿、③保護です。

治療開始前に口腔内をチェック。早めの保清に取り組んでもらい、歯磨きはとにかく毛のやわらかいブラシを

ベクティビックス治療開始前のインフォームドコンセントの際には、必ず口腔内をチェックし、トラブルの有無の確認とともに、1日の歯磨き回数などのケアの状況について確認しておきます。う歯や歯肉炎がある場合は、ベクティビックス初回投与までに治療をすませておくことが理想的ですが、難しい場合には、できる限り口腔内細菌量を減らしておくために、治療前から口腔ケアに取り組んでいただいています。

さまざまな研究報告により、口腔内の細菌数は食事により唾液が分泌されると抗菌作用によって減少するものの、その後時間の経過とともに再び増加、就寝中には唾液の分泌量が減少して口腔内が乾燥することで増加するといわれています(図1)。そこで、口腔内の細菌が増加するタイミングに合わせて、起床時、食前(・食後)、睡眠前のうがいを実施していただきます。そして、夜間に目が覚めたときやトイレに行くついでのうがいも勧めています(表1)。

(図1)口腔内総細菌数の変動イメージ

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(表1)口腔ケアのタイミング

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保清ケアでは、食後の歯磨きで口腔内の食物残渣物や歯垢を除去して細菌の増加を抑制することが重要です。うがいと合わせると、1日の口腔内ケアの回数が多くなり、面倒だと感じる患者さんもいます。ですから、(図1)のようなグラフを提示して、ケアの根拠について、視覚的に説明することで、患者さんがケアの必要性を理解し、主体的に取り組めるように工夫してます。

使用する歯ブラシは、実際のサンプルをお見せしながら「“やわらかい”か“超やわらかい”ものを選んでください」と説明しています。ブタ毛などの獣毛製品がいいという意見もありますが、獣毛は乾きにくく菌が付着しやすい性質があるので、当センターでは勧めていません。また、歯ブラシを強い力で大きく動かしながら磨くのではなく、1本1本丁寧に愛護的に磨くように指導しています。

その他に、味覚障害の原因となりうる舌苔の除去についても指導しています。舌には生理的に薄っすらと白く舌苔が付着していますが、口腔内の乾燥が強いと、べったりとした厚みのある舌苔が生じやすくなります。このような場合は保湿ジェルを舌苔部分にしみこませて、汚れをふやかし浮き上がらせてから、スポンジブラシや口腔ケア用ウェットティッシュなどで丁寧に拭き取ります(図2)。最近は市販の保湿ジェル製品が充実しており、当センターで色々試したところ、「刺激が少なくて味がナチュラル」なものが患者さんには好まれるようでした。

(図2)口腔ケア用ウェットティッシュやスポンジブラシを使用した保清法

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保湿と保清を兼ねたうがいは、口腔内の乾燥状態や口腔内の細菌数の増加のタイミングに合わせて

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うがい薬に関しては、殺菌作用の高い薬剤が患者さんには好まれますが、これらには口腔内を乾燥させるものもあるため使用を控えていただくこともあります。当院で推奨しているアズレンスルホン酸ナトリウムは、殺菌作用はありませんが、抗炎症作用や粘膜保護作用、創傷治癒促進作用が期待できます。さらにグリセリンと併用することで浸透効果が高まり、保湿持続期間も長くなります。うがいの度に、うがい液を作成していただくことが望ましいのですが、面倒に感じてうがいをしなくなる患者さんも中にはいます。そのような場合、一日分のうがい液を洗える容器に作成していただき、その日のうちに使い切ってもらうようにしています(表2)。乾燥が強い患者さんには市販の保湿ジェルや洗口液を勧めています。

その他の外出時の保湿ケアとして、ガムや飴を使用して唾液分泌を促す方法や、市販の保湿スプレーやレモン水をスプレーボトルに入れたものを持ち歩いて、こまめに噴霧してもらう方法などを紹介しています。外出がお好きな方やこまめにケアしにくい高齢者には特にお勧めしています。

治療が長期に及び、免疫力が慢性的に低下しているような患者さんや、副腎皮質ステロイドホルモンを使用中の患者さんは、カンジタ性口内炎を発症することがあるので抗真菌作用を有するタイプの保湿剤を勧めることもあります。特に、過去にカンジタ性口内炎を発症したことがある患者さんは要注意です。

(表2)咳嗽液の処方例

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保湿・保清ケアを十分に行うことが保護ケアにもつながる

3つめのケアは保護ケアによる機械的・物理的刺激からの回避です。とはいえ、保湿・保清ケアがきちんと実施されることにで粘膜保護効果が高められ、細菌感染や機械的・物理的刺激を受けにくくなるので、まずはしっかりと保清・保湿ケアを行っていただくよう説明しています。

また、先にご紹介した保湿剤は食前に使用することで、食物や咀しゃくによる刺激から粘膜を保護してくれます。食前の唾液腺マッサージも唾液の分泌を促して口腔内を保湿するのに有効です。口唇の乾燥や口角が切れやすい方には、リップクリームを食前に塗って保護することをお勧めしています。

口内炎を悪化させる原因をアセスメントし対策を立てる、疼痛時はNSAIDsやリドカインで積極的な除痛を

口内炎発症のリスクは患者さんの治療状況によって異なります。例えば、治療歴が長い、併用薬剤の種類や投与量・投与回数が多い患者さんは、リスクが高いと考えられます。また、高齢者や、利尿剤や抗不安薬を服用されている患者さんも、口腔内が乾燥しやすいためにリスクは高いです(表3)。その他、う歯やステロイド使用の有無も口内炎発症リスクに影響してきます。このような口腔内が乾燥しやすい患者さんには、こまめな水分摂取や氷片を含む、うがい、保湿ジェルやスプレーの使用を勧めています。

口腔ケアそのものが難しくなるのは、口腔機能的に口を開けることができない患者さんや、吐き気のために口中にものを入れることのできない患者さんなどです。このような患者さんの場合は、口腔ケアを妨げる原因をアセスメントすることが不可欠です。例えば、吐き気の強い患者さんであれば制吐剤を使用してうがいなどができるように導くことが大切です。

それでも口腔ケアが奏効せず、「噛むときに触れると痛い」「風が当たって痛い」と疼痛を訴えるようなときにはNSAIDsの全身投与や、リドカイン含嗽などの局所投与を検討します。ただ、痛みが取れたことで安心して食事をしてしまった結果、機械的刺激で損傷を強めることもあるので、充分な保湿や口腔内を傷つけない食事形態への変更も併せて行います。

当院では、ベクティビックス治療に伴う重症の口内炎は経験したことはありませんが、疼痛がとても強い場合には歯科の先生にコンサルテーションをお願いすることもあります。栄養管理については、適宜、栄養士が対応し、食べやすいもの・やわらかくて水分が豊富なもの・人肌程度に冷ましたものを摂取するように指導しています。

(表3)口内炎の発現に影響する因子

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患者さんの理解度に応じて説明に強弱をつける。セルフケアにより趣味や大切にしていることを継続できるよう支援して、ケアに対するモチベーションを上げる

患者さんにセルフケアについて説明するときには、当院のオリジナルの資材(写真1)を用いて、ケアの重要性から実際の方法まで看護師が細かく説明しています。初回治療の際には20~30分ほどのお時間をいただくこともあります。当然ですが、患者さんご自身の年齢や体力、個人的背景によって理解度や集中力は異なりますので、患者さんに応じて内容の絞り込みなどの工夫をしています。また、前述したような口内炎発症の可能性が高い患者さんには、リスクが高い旨もきちんと伝えてケアの重要性を理解していただきます。

なかには、「あれもこれもやってください、と言われることがプレッシャーになる」とおっしゃる患者さんもいます。ですから、治療や副作用に対する患者さんの想いや、日常生活の中で患者さんが大切にしていることを汲み取り、それらを継続していくためにはどのようなケアが必要なのか、という観点からケアについて説明しています。患者さん自身がケアの必要性に気づくことで、ケアに対するモチベーションも向上します。例えば、何気ない普段の会話の中で、「週に1回の外食が楽しみだ」という患者さんには、「これからも外食をおいしくいただくたみにきちんとケアしましょう」とお伝えします。

また、当院ではベクティビックス治療を開始した日から、患者さんに副作用チェックシート(写真2、3)をお渡しして、毎日の体調変化について記録していただいています。これは口内炎だけではなく、皮膚症状や消化器症状など日々の様々な症状についてセルフチェックできるようになっています。チェックシートに毎日記録をつけることによって、セルフケアの効果が一目瞭然となり、患者さんご自身の励みにもなっています。

ベクティビックス治療開始後は、定期的にケア実施状況と効果について確認を行っています。セルフケアが上手くいっているときには、ケアの効果について改めて言葉でお伝えし、患者さんのモチベーションをより一層高めるように工夫しています。

(写真1)患者さん指導用のオリジナル資材

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(写真2)副作用チェックシート

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(写真3)チェックシート記入マニュアル

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